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『クローンは故郷をめざす』を観た感想

監督 中嶋莞爾
出演 及川光博 / 石田えり / 永作博美



宇宙飛行士の耕平(及川光博)は、自分の身に万が一の事が有った時の為に記憶と肉体のコピーをクローン研究所に残す。
そしてある日、耕平は宇宙ステーションの事故で命を落とす事になり、合法的な人類初のクローンとして蘇生される事になる。
しかし、クローンとして再生した耕平は記憶障害を起こしており、双子の弟である昇が幼い頃に川で溺れ死んだ事故の記憶に苛まれる事になり、、、。


この作品は、サンダンス映画祭でNHK国際映像作家賞を受賞した脚本を、あのヴィム・ヴェンダースがプロデュースして映画した物らしいです。
全く知らない作品だったんですが、映画好きかつミッチーファンである知人に教えてもらいました。
先日レンタル店でウロウロしてたら発見したので、さっそく鑑賞してみる事に。


まずは、プロデュースを自ら名乗り出たらしいヴェンダースについて。

「一番好きな映画」を挙げろと言われると難しいんだけど、でもベスト3を挙げるなら自分は、ヴェンダースの『ベルリン天使の詩』(1987)が上位3本の中に必ず入ります。
残念ながらリアルタイムでは無いんだけど、十数年前にビデオで初めて見たとき、一晩で連続3回見ましたからね(笑)。
一回目は普通に見て、二回目はスケッチブックを片手に台詞をメモしながら見ました。
そして三回目は字幕を観ず、ひたすら画面の中の人物達を見てました。
今でも自分の中では、映像もストーリーも台詞も全てが美しい完璧な作品です。

ヴェンダース作品で評価が高い物だと、『パリ、テキサス』(1984)や『アメリカの友人』(1977)あたりなんでしょうけど、自分はこの2本より『都会のアリス』(1973)や『ミリオンダラー・ホテル』(2000)が好き。
ミリオンダラー・ホテルのミラ・ジョヴォヴィッチはホントに綺麗なんですよねぇ。
トムトムを演じたジェレミー・デイヴィスも良かったし、最初と最後の映像の美しさは圧巻。音楽もいい。


そんな、自分の中では特別な監督の一人であるヴェンダースが自分からプロデュースを買って出た脚本ってどんなのだろう?って凄く気になってたんですが、、、、、ああ、ヴェンダースの好きそうな絵だな、、っていうのが最初の感想(笑)。


一見すると、「綺麗な絵画」の様な映画。
ぼんやりと眺めているだけでは「綺麗だけど退屈な絵」で終わってしまうけど、詩的な空気感の中に仕掛けられた難解なピースに気が付くと、様々なシーンが胸に突き刺さる。
魂と家族愛と郷愁を描いた、切なくて悲しい、だけど優しくて暖かい映画。

ただ、ちょっと残念なのは色々な部分で「少し足りない」印象を受けることかなぁ、、、。
作品の方向性、語り口、設定、脚本、演出、演技etc、それぞれにちょっとずつ足りない印象を受けました。
例えば、永作博美さんの熱演は凄く良いんだけど、前に出すぎてて主演のミッチーを殺してしまってる印象を受けるし、綺麗な田舎の風景は凄く良いんだけど、でも見せ方がイマイチで、絵だけで画面に惹きつける力は無い気がしました。

その辺りはやっぱり、長編作品の初監督っていう事が大きいのかな。

そして一番残念に思うのは、あまりにも見る人を選ぶ作品になってしまっているところ。
これ、普通の人はほとんど寝ちゃうと思うんだよなぁ、、、、、(笑)。

ヴェンダースの凄いところのひとつは、芸術作品になってしまう一歩手前できちんと娯楽作品にしてるって事なんですよね。
もちろん、中嶋監督があえて分かり易さを排除したのかもしれないけど、でもそれならもう少し画面に引き込む力が欲しかった。「感性の問題でしょ」って言われればその通りなんだけど、そこで前述の「色々な部分での足りなさ」を感じてしまうんですよねぇ。


※以下はネタバレ感想を含んでるので折りたたんでおきます


幼い日の耕平が、弟を亡くした後に母へ向かって「僕はこーちゃんじゃないよ、つよしだよ。死んだのはこーちゃんだよ。」って言ってたのは、ひょっとするとクローン達が別々の人格だった事を意味する複線だったのかな、なんて気もしました。

一人目のクローンは妻を知らず、母の死を知った。
二人目のクローンは妻を知ってるが、母の死を知らない。

って事は、、、
耕平だと思われてた一人目のクローンは実は昇の魂を持ち、彼が背負ってたのは耕平の死体(魂)で、彼は兄である耕平を故郷に届ける為に死んだのかもしれないですね。だからずっと宇宙服を背負ってたと。
幼少時代の川の事故でも、最初に救いに動くのは弟の昇だったし。

そして、耕平の完全なクローンである「二人目のクローン」は、昇を埋葬してあげた後、母と昇が家に入って行く「あの時」の光景を目にする。それはきっと、母と昇の魂を見送ったっていう事なんでしょうね。

そう考えると、益々切ないストーリーになって来るんですよねぇ、、、。
じんわりと泣けました。


記憶と肉体を再生する事のみで、それは人と成り得るのか?

『月に囚われた男』に似た作品かも。

静かで綺麗で繊細な、ガラスの様な映画が好きな人にはおススメ。
自分は結構好きです。

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Category: 映画