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『ウォッチメン』を見た感想



監督:ザック・スナイダー
原作:デイブ・ギボンズ
主演:タイラー・ペリー


劇場で『ウォッチメン』見て来ました。
2年ぶりくらいの映画の感想かなぁ。感想の再開一発目から、かなーり難しい作品になりました(笑)
馬鹿な自分にはなかなか難解な作品で、感想をまとめるのに時間かかりましたねぇ…。


原作はアメリカでは有名な漫画らしいですね。
原作者はアラン・ムーアって作家さんで、バットマンとかと同じDCコミックの作品。
監督はあの『300<スリーハンドレッド>』のザック・スナイダー。
豪華CGたれ流しの馬鹿アクション映画かと思いきや、重厚で骨太な163分のサスペンスドラマ。



舞台は1980年代。
ニクソンが3期目当選をしていて、アメリカはベトナム戦争に勝利した世界。
冷戦が続き、冷戦の中で世界は『核戦争による世界破滅』へと最終的なカウントダウンの段階になっていた。

ベトナム戦争やケネディ暗殺等、歴史に刻まれた大事件の陰には『ヒーロー』達がおり、彼らは人々を救う為『ウォッチメン』として世界を見守っていたが、『キーン条例』という法律によりヒーロー活動(自警活動)が禁止されてしまい、ヒーロー達の大半は引退してしまっていた。

そんな中、ある引退したヒーローが何者かによって殺され、同じくヒーローである『ロールシャッハ』が独自に調査を始める。
人間を遥かに超越したヒーローを殺せる存在とは一体何者なのか?引退したヒーローを殺すのは何を目的としているのか?

だが、そんな彼をあざ笑うかの様に、次々とヒーロー達が…。




抑止力としての必要悪の是非と、『正義』とは何ぞや?
そして、この世界においての『正義の味方』とはどういう存在になるのか?『裁く者』を一体誰が裁くのか?
…を問うた作品。だと思います(笑)。

元々、バットマンやスーパーマン等のヒーロー達が実在してたらどういう事になるか?って発想の元に描き始められた作品らしく、露骨にモデルの判るヒーロー達が登場します。
フクロウ(オウル)の格好をしたバットマンそっくりな『ナイト・オウル』とか(笑)

そもそも『正義の味方』っていう存在が矛盾してるんですよね。
自分もガキの頃に色々なヒーローが大好きだったし今でも大好きなんですが、でも、大人になると「全てを救うのは不可能」だと分かってくるんですよね。
「誰かを救う」という行為は同時に「誰かを救わない」という意味だし、全てが同等に大事で特別な存在だと言うのであれば、それは即ち全ての物は同等に意味が無いという事でもある分けで。

『正義の味方』はとどのつまり「自分の価値観で救いたい者を救う」だけの単なるエゴイストに過ぎず、そんな彼らの体言している矛盾は、そのまま『正義』という物の矛盾をも証明してしまってるのであって。
噛み砕いて例えると、受験勉強で頑張ってる特定の個人を応援する人を『正義の味方』だとするなら、彼が応援してる人が合格する事で合格者枠が一人減り、その為に落ちてしまった一人から見ればその『正義の味方』は悪でしか無いんですよね。
『秩序を乱す者を駆逐する』という建前を持って己を『正義』とするなら、それは有りもしない大量破壊兵器を理由に大虐殺を行ってた某馬鹿前大統領と何も変わらないんだし。

だから自分、そういうヒーローという存在の抱える矛盾と悲哀を描いた作品に惹かれるんですよねぇ…。
エゴに過ぎないと分かっていても、でも俺は奴らを許せないんだ!って感じのダークヒーローに燃えるんです(笑)



この『ウォッチメン』でも数々のヒーロー達が各々の『正義』を語り、それぞれの哲学に則って『世界を救う』為に行動します。

ある者は神に近い力を手に入れてしまったが故に人間という存在が余りにも卑小な物となってしまい、人間は救う価値がある存在なのかどうかと困惑する様になる。

ある者は己の辛く暗い過去への復讐として『悪』を狩り続ける事になり、その為には手段を選ばず暴力を行使して行く。

ある者は『小心者』である本当の自分を仮面で隠し、闇の中で『正義』という理想を追求しようとする。

ある者は政治と癒着する事で『正義』を施行する。そんな『正義』の馬鹿馬鹿しさを知り、人間の愚かさとそんな彼らと何ら変わる事の無い『ヒーロー』としての自分や、その存在を「悪いジョークだ」と笑い飛ばしながら己の欲望に素直に行動(正義の施行)して行く。

ある者は世界トップクラスの富と権力を入手し、それらを駆使して世界を救おうとする。


そんな彼らを狙い、暗殺して行く者の目的は…?



いやぁ、面白かったです。
最近アメコミ物の優れた作品が多いですが、『ウォッチメン』はアメコミヒーロー物なんでは無く、ヒーローを使って『正義』とは何ぞや?ってテーマを描いてみせたサスペンスドラマですね。
その辺りはアメコミ物の傑作『ダークナイト』にも通じる物がありますが、あれよりも更にテーマが重厚で描き方が重いです。
派手なアクションを期待してると肩透かしで寝てしまうと思いますが(実際、「退屈」っていう酷評が多いですね)、普段アメコミ物を見ない人達にこそおすすめの作品かもしれません。
ただ、バイオレンス描写がかなりエグイので、そういうのが苦手な人にはおススメできませんが。


個人的には『ロールシャッハ』の異常なカッコ良さに痺れました(笑)
最初はただのキ○ガイなんだけど(笑)、彼の『Do it !!!』って絶叫にはちょっと泣けたなぁ…。
顔の無い男が「自分が自分である為に」、自己のアイデンティティの為に己の運命(絶望)を迷わず決断する瞬間なんですよね。
自分の暗く辛い生い立ちへ対して一切の言い分けも妥協も無く、目の前に完全なる絶望が立ち塞がってても一瞬の迷いの欠片も無く己を貫く姿に惚れました。
「俺を殺したきゃ中に入って来い」もカッコ良かったなぁ。映画をラストまで見た後に序盤の彼の言動を思いおこすと泣けて来ます。
あの新聞社の奮起を期待したい…(笑)

ただ、ネット等で見る感想の中で「あの選択をした彼こそ本当のヒーロー」「最後まで正義を貫いた」っていうのを結構見るけど、それは違うんじゃないかな?
彼は『正義を貫く人』としてあの選択をしたんでは無く、そこで自分を曲げたら『顔の無い自分』のアイデンティティが崩壊してしまうからでしょう。
彼が自身の存在を確認する方法は唯一、彼の思う正義を遂行することであって、それがたとえ間違っていて世界を滅ぼす結果を招こうとしても彼はそれを貫くしか無いんですよね。
彼の『正義』は彼自身の過去への復讐に過ぎず、それを辞めたら彼は生きて行けなかったんだと思う。
自分が自分で有り続ける為にあの選択しか有り得なかったんであり、行為の善悪は実は問題では無かったわけで。



ネックは完全なる主役として視点を絞り込む事をしていなかった為に、中盤までの展開がやや力不足な事。
最初の15分は凄く良いけど中盤に少々中だるみ感が。終盤はまたとんでも無く良いんですけど。
視点を一人からの物に絞り込んで、もっと観客を引っ張る力のある展開にしてればもっと成功したんじゃないかなぁ…。
その辺りの完成度において『ダークナイト』には遠く及ばないですね。
最後まで見終わった感想では、『ダークナイト』と甲乙付けがたい良い作品なんですが。



アメリカ帝国主義を肯定するかの様な言動のキャラと、彼に利用されてしまうモロに原爆の暗喩である某キャラが同じアメリカ人であったり。
アメリカ的考えが導き出す様な結果に激高しつつも、結局は受け入れてそのまま日常に戻っていくカップルが居たり。
アメリカ人って馬鹿だなぁ…と思う事が多いけど、でもちゃんと問題意識を持ってる人達や、そういう側面を描いた作品もきちんと存在するのは偉いよね。

結局、この作品が答えとして提示したのは『混沌の中の奇跡』である某人物の存在の有り方なのかなぁ…。
もう一回見ないと馬鹿な頭ではまだ理解仕切れません(笑)。


プラス60分の完全版をDVDとして出すらしいので、自分は絶対に購入します(●^ω^●)
大人になっても『スーパーヒーロー』が好きな方は必見の作品。

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Category: 映画