MILLION MIRRORS-blog-

自作のイラストや漫画、映画の感想等が中心です。

「NARC」

監督・脚本 ジョー・カーナハン
製作 トム・クルーズ
出演 ジェイソン・パトリック / レイ・リオッタ


少し前に劇場で観た「スモーキン・エース」の監督・脚本ジョー・カーナハンによる2003年公開アメリカ映画。
結構評判も良かったのでDVDを購入して鑑賞しました。


素晴らしい。
久しぶりに「完璧なんじゃないの?」って思った作品。
自分が観た事のある「警察」を扱ったサスペンス映画ではアカデミー受賞作「LAコンフィデンシャル」と並ぶ程の衝撃を受けました。

麻薬潜入捜査官テリス(ジェイソン・パトリック)は捜査中に少女を救う為に犯人を射殺するが、その時の流れ玉が妊婦に当たってしまい妊婦のお腹の中の赤ん坊を殺してしまう。
その悲しみから立ち直れないで居るテリスは同じ麻薬潜入捜査官カルベスの殺害事件に乗り出す事になるのだが、その為のパートナーになったオーク警部補(レイ・リオッタ)はカルベスの元パートナーであり、しかも昔妻を失っていたのだった。
数々の壁を乗り越え、2人が辿りつく真実は、、、、。


悪人では無いものの完全な善人でも無い「普通の人間」のモラルを描いた作品(監督談)。
愛する物を守るための個人の「正義」が暴力になって行き、法と正義を守ろうとする人間が「真実」を見つけられずに彷徨って行く。
「正義」とは?「人として正しい事」とは?


丁寧かつ巧い演出で主役2人の警官の感情を描いていき、最後にズシリとのやり場の無い悲しみを残す作品。
クライム・サスペンスの様で、その実は重厚な人間ドラマ。

ひたすらに愛する物を守ろうとしたオーク警部補がとにかく良い味出してて、「LAコンフィデンシャル」でラッセル・クロウが演じた「バド」に共通する強烈な男臭さを持ったカッコ良さで、、、真実が明らかになる終盤では泣きました。
「漢」(『おとこ』と読む:笑)に痺れる野郎なら絶対に惚れる(笑)。


まずは、緊張感のある展開の中で人物の心理状態や状況を画面で絵として見せる演出が巧い。
テリスの背負ってしまった十字架を演出する為に彼のたたずむ野外シーンは寒々としたブルーの色調を多用し、彼が妻や子供と過ごす心休まる自宅の中は赤っぽい暖色。
そして、テリスが家庭を失って行く状況に合わせてその暖色もだんだんと薄れて行き、最後はごく普通に「リアルな色」になってしまう。
(このあたりは、スティーブン・ソダーバーグもアカデミー受賞作「トラフィック」で使ってた手法ですね。)
追跡シーンでは手ぶれカメラで見せ、フラッシュバックの使い方も過剰にならず効果的。

細かく効果的な演出の数々が観るものの想像を色々と喚起し、徐々に真実を見せていく。
終盤に二転三転する展開からのラストには、物凄く引き込まれます。

得意顔で「途中で先が読めたよ」って言ってるアナタ、勘違いしちゃいけないです。
さり気無い細かい演出の積み重ねで徐々に画面内の情報として「結末」を刷り込んでいってくれてるんですよ、監督が。


演技も良かった。
ジェイソン・パトリックもなかなか良い演技してたけど、とにかくレイ・リオッタの迫真の演技が凄い。
インタビューを観るとその凄さが良く分かるんだけど、作中の印象と全く違うんだよね。
作中では体重を増やしヒゲを生やした上で完全に役に成りきってて、まるで「冷徹で粗暴な男」にしか見えない。
しかもそれが演技に見えずに、圧倒的な存在感を放ってます。
すげぇ。

でしゃばらないのに効果的な音楽も良かった。
普段はソダーバーグの音楽を担当してる方なんだそうで。流石って感じ。


この映画、撮影開始9日でお金が無くなって撮影が中断したりフィルムを買えなくなったり、カメラを移動する台車が壊れたら修理も出来ずそのままハンディカメラとして利用したり、、、、って程に低予算で作られたインディペンデント映画だったらしいですね。
それがサンダンス映画祭で上映されると絶賛を受けてパラマウントが買い取る事になり、作品に惚れ込んだトム・クルーズが製作を引き受ける事になったそうな。
凄い。


少し前に劇場で観た同監督&脚本作品「スモーキン・エース」の感想で、「途中まで馬鹿アクション映画だったのに、最期に普通の映画になる」「後半が弱い。ヒネリが足りない」「比較されてたタランティーノ、ロバート・ロドリゲス、ガイ・リッチーらを越えるには到ってない」とか言いましたけど、ジョー・カーナハンの持ち味は前述の3者みたいな捻りの効いたテンポの良いお馬鹿映画で無く、きっとこの「NARC」みたいな重厚で圧倒的なドラマなんでしょうね。
「スモーキン・エース」もなかなか良かったけど、「NARC」の方が遥かに良かった。ジョー・カーハンには今後もこの作品みたいな力強いドラマを撮って欲しい。

そんな感じで、この「NARC」一発でジョー・カーナハンに惚れました(笑)。
暗く地味なドラマなので見る人を選ぶけど、「LAコンフィデンシャル」「フェイク」とか好きなら、絶対観ましょう。
命令。

1 Comments

哀生龍  

まさにその通り!

>「漢」(『おとこ』と読む:笑)に痺れる野郎なら絶対に惚れる(笑)。
>とにかくレイ・リオッタの迫真の演技が凄い。
>「スモーキン・エース」の感想で、~中略~とか言いましたけど~以下略

漢を魅せる作品については、秋さんのコメントに「哀生龍も秋さんに同じ」と署名したいです(笑)
思った事、言いたいことを、秋さんがみんな代弁してくれているような気がします!

2007/06/21 (Thu) 18:11 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment

You may also like

Category: 映画