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「バベル」

監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演 ブラット・ピット / ケイト・ブランシェット / 菊地凛子


この作品の監督であるイニャリトゥの「21グラム」が凄く好きな作品だったので、製作の噂が出た頃から楽しみにしてた作品。
前評判の不自然な高さがちょっと鼻に付いたけど、ひとまず劇場へ足を運びました。


夫婦の絆を取り戻す為にモロッコへ来ていたアメリカ人夫婦のリチャードとスーザンだったが、バスで移動中にスーザンがライフルで撃たれてしまう。
その頃、夫妻の2人の子供はベビーシッターに連れられメキシコへ向かい、やがて日本では聾唖の少女の父が事件で使用されたライフルの所有者として警察から事情聴取をされる事に、、、。

タイトルの「バベル」とは「旧約聖書」の「創世記」に出てくる巨大な塔の事。
天まで届く巨大な塔を作ろうとした為、神の怒りに触れて共通していた言語を奪われてしまい(言葉をバラバラにした)、それが原因で塔が完成出来なかったってお話(多分)。
でもこの作品、決して「言葉の壁」を描いた作品では無いと思う。
菊地凛子演じた「チエコ」は聾唖だったけど、それはあくまで「他人との繋がりを渇望してる」人間の他人との「壁」の要因の一つとして描いてるに過ぎないし。


どうしようも無く愚かでちっぽけな生き物「人間」は、誰もが他者との繋がりを求める孤独を抱えているのに、言語や性別、生き方、立場、国籍、年齢、等の些細な壁が理由で「分かり合えない」。
そんな孤独な魂が、他者と繋がりあう為に苦悩し傷ついて行く姿を描いた話。
「悪い人間じゃ無い。愚かなだけ」(作品中の人物の言葉)。

メキシコが舞台の話では、子供同士が素直に交流する中、大人同士は法律や生活習慣の違い等で壁を作り子供達をも巻き込んだ悲劇を生み出す。
モロッコが舞台の話では、政治による国同士の壁が悲劇を生み出し、アメリカとイスラム世界の深い溝も描かれる。
そこで悲劇を乗り越えたのは政治も宗教も関係無い「父」という同じ立場を持った人間同士の繋がりだった。
日本が舞台の話では、父や健常者と分かり合えない聾唖の女子高生「チエコ」が他人と分かり合える手段を望んで苦悩するが、言葉や手話といった「言語」で巧くコミュニケーション出来ず、自身の肉体を使ってその「壁」を乗り越えようとする。


日本編を観て「聾唖の人達への差別だ」とか「日本人の女子高生はあんな変態ばかりか?」と批判する人も居るけど、それは違うと思う。
そこで描かれてるのは、そういう種類の人の中でも特に他者との繋がりを渇望してる人を分かりやすく記号化した物に過ぎないんだし。
だって、モッロコの少年だっていきなり観光バスを撃ったりするワケ無いし(笑)、メキシカンが全員理由も無く国境警備を突破する様な無謀な人ばかりで無いのは描いてる監督が一番良く判ってるはずだし、そんな事は説明されなくても普通の大人なら分かることでしょ。
菊地凛子さん演じるチエコがもどかしい思いを真正面からぶつけるシーンで「裸になる必要性を感じない」という意見も見るけど、あのシーンで一番分かりやすく描きインパクトを持たせるなら、あの方法は充分有りだと思う。

それらの記号化された描かれ方がベストだとは思わないし、人によって描かれ方に不快感を持つ部分があるのは仕方無いけど、明らかに理解出来て無い事を無自覚の上で頭ごなしに批判してる人達を観ると、なんだかなぁ、、と思ってしまう。


結局この作品でもイニャリトゥは「21g」と同じで「絶望の果ての希望」を描いていて、相変わらず彼は情熱的で優しい人間なんだなぁ、、、と感じた。
そういう部分ではトム・クルーズ主演の「マグノリア」にも似てますね(大好きな作品です)。
「21g」に比べて時間軸の崩し方も控えめだし、イニャリトゥにしてはかなり分かりやすい作品になってると思う。テーマの見せ方も。
ただ、その分かりやすさ故にやや薄い作品になってる印象も否めないかな。良い作品ではあるけど、「21g」程は胸に突き刺さらない。
菊地凛子さんの熱演はなかなか素晴らしいと思うし、ガエル・ガルシア・ベルナルも良かったけど、「21g」のデルトロやショーン・ペンと比べると3枚くらい落ちる感は否めない。


テリー・ギリアムの傑作「未来世紀ブラジル」が難解なせいでマニアにしか受けなかったけど、その後に分かりやすい大作「12モンキーズ」を撮ったら大ヒットしたのに似てる感じ。
そういや、「12モンキーズ」もブラピ主演だなぁ、、


この作品の不幸はブラピ主演とアカデミーでの話題性のおかげで、通常はこういう映画を観ない種類の人達に鑑賞される機会が増えてしまった事かもね。
沢山の人に観られることはもちろん良いことだしビジネスである以上は正しい事なんだろうけど、あまりに酷い批判のコメントを目にするとファンとしては複雑な気分になってしまう。
「菊地凛子のヌードなんて観ても誰も興奮しない。」とか下衆な事言う種類の人は、マイ○ル・ベイの映画でも観て「うわぁ、凄いでちゅね~」って言ってて欲しい(笑)。



色々と粗も多いし決して「傑作」では無いけど、なかなかの秀作だと思います。「21g」「マグノリア」「クラッシュ」とか好きな方にはオススメ。

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