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『空気人形』を観た感想

監督 是枝裕和
出演 ペ・ドゥナ/ARATA/板尾創路/オダギリジョー


「心を持つ事は、切ないことでした。」

2009年公開の日本映画で、主演は韓国の女優ペ・ドゥナ。
「心」を持ってしまった「空気人形」が他者との触れあいの中で苦悩する物語。
以前、どこかで見たレビューで絶賛されてたので気になってんですが、先日DVDで鑑賞しました。


ファミレスで働く秀雄(板尾創路)は他者との係わり合いをわずらわしく思い、帰宅後に話かける相手は「空気人形」である「ノゾミ」だけだった。
そんなある日、空気人形のノゾミは心を持ってまう。
秀雄の前では人形として振る舞い、彼に見つからない日中に家の外へと出て行くノゾミは観るもの全てに驚きと感動を得る毎日を送り、偶然立ち寄ったレンタルビデオ店で店員の純一(ARATA)と出会う。
そのレンタルビデオ店でバイトを始めたノゾミは次第に純一に惹かれ恋心を抱く様になって行くが、ある日、偶然のアクシンデトによって空気人形である事が純一にバレてしまい、、、。

凄く良かったです。
冒頭の15分くらいで凄く切ない話になるのが見えて来ちゃって、途中で「観なきゃ良かった、、」と思ったくらい(笑)。


秀雄は日々の生活に空虚感を持つ冴え無い中年男性で、毎日帰宅後にノゾミに語りかけ、そして自身の性欲の処理をする。
ノゾミが恋する純一は「死」に心を囚われており、人形であるノゾミに対して「僕も同じだよ。いつも空っぽなんだ」と語る。
他にも数人の登場人物が居るんだけど、皆、心に空虚感を持った孤独に苛まれる日々を送ってるんですよね。

老女は毎日交番へ行き、つまらない嘘を付いては警官に話相手をしてもらおうとし、ゴミ屋敷に住む女性は過食へと走る。
独身のアラフォー女性は自宅に自分で留守電を入れ、引きこもりの青年は美少女フィギュアを見ながら自慰行為にふける。

皆、自身の内の「欠如」を埋めようともがき苦しむけど、でも秀雄の様に「他者と関わって傷付くのは怖い」んですよね。
某アーティストの歌の歌詞「一人じゃ何も見え無いくせに、二人じゃ怖くて何も見たくない」ってのを思い出します。

でも、他者と関わる事の煩わしさや怖さを知らない人形のノゾミはどんどんと他者と係わり合いを持ち、そしてついには自身の心の「欠如」が埋まる喜びを知る。
しかし、自身の心の空虚感を埋める喜びが他者にとっても同様とは限らないという現実に直面し、愛する事の難しさと苦しさを知る。

「生命」を持ち「心」を備えても、人は人として完結できない。
人はきっと生まれながらにして「空っぽ」で、それは他者との関わりの中で共鳴したり影響しあう事で埋められる「欠如」。
そしてその「欠如」こそが、他者への心の扉に成りうる物なのかもしれない。


まずは、主演のペ・ドゥナさんが鬼の様に魅力的でした。
人形だったノゾミが少しずつ人間味を持っていく様を見事に演じてると思うし、笑顔や仕草が凄く可愛いんですよねぇ。

冒頭、人形のノゾミがベランダの雨の雫を手に取り「綺麗、、、」と呟いた瞬間に心が宿るんだけど、凄く綺麗で良いシーンでした。
このシーンでは、とんでも無くスタイルの良いペ・ドゥナさんがフルヌードを見せてるんだけど、全然エロさは無くてどこか非人間的な綺麗さを感じさせてるのも凄く良かったです。
また、夜景で町の明かりを緑に統一して見せたりと綺麗で独特の雰囲気を持つ画面作りも良かったし、ゆったりと落ち着いた雰囲気の中で「人」「生命」への慈しみを感じさせてくれる優しい物語が心に染みます。


ノゾミが恋する純一が「死」に囚われてる理由は明確に描かれてはいないんだけど、きっと写真の中の女性が関係してるのかな。
そんな彼は、ノゾミの「空気が抜けていく」様を目撃した時、そこに「死」を感じ魅了されてしまう。
そして彼は心のどこかで「死」を望んで居たからこそ、終盤のラヴシーンでの衝撃的な出来事を自身の手で脱しようとしなかったんでしょうね。


かなり生々しい性描写(セックスや自慰行為等)が多いので好き嫌いの分かれる作品だとは思うけど、自分は凄く好きです。
「心を持ってしまった人形(ロボット)の切なさ」みたいなのを描いた作品が好きな方には物凄くおススメ。

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Category: 映画