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『人生の特等席』を観た感想

製作 クリント・イーストウッド/ロバート・ローレンツ
監督 ロバート・ローレンツ
出演 クリント・イーストウッド/エイミー・アダムス/ジャスティン・ティンバーレイク


82歳という高齢ながら安定して素晴らしい作品を撮り続け、世界中の映画人から尊敬されるクリント・イーストウッドが、自らの監督・主演作『グラン・トリノ』以来4年ぶりに主演した作品。
『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』で二度のアカデミーを受賞したイーストウッドは今回メガホンを取らず監督を任せたのは、今回が初監督になるロバート・ロレンツ。
彼は長年イーストウッドの右腕として数々の映画製作に携わって来ており、イーストウッドの後継者として期待されているのだそうです。
それも納得の素晴らしい映画でした。


イーストウッドが演じるのは、メジャー・リーグの伝説のスカウトマン「ガス」。
彼は数多くのスター選手を発掘した有能なスカウトマンだったが、老いと共にスカウトで獲得できた選手の数も減り、自らの勘に頼りデータを重視しない彼のやり方に対して球団フロントから批判の声も挙がる様になっていた。

そんな中、追い討ちをかける様に医者から失明の危機を告げられたガスだったが、そこへ一人娘のミッキー(エイミー・アダムス)がたずねてくる。
彼女は長年離れて暮らしていた一人娘であり、いつもすれ違って心を通じ合わせる事の出来ない父を手助けする為に訪ねて来たのだった。
そして、ミッキーはガスと自分の関係の中に隠された真実を知って行く事になり、、、。


少し前に「2012年に見た映画のBEST20」をアップしたんですが、個人的にこの作品は今年見た映画の中で2~3位を争うくらい好きですね。
あまり話題になってない作品だけど、劇場へ足を運んで良かったです。

原題は「Trouble with the Curve」。
「変化球に対応できない」みたいな意味なんだろうけど、これはガスの進退を左右する事になる「カーブ(変化球)が苦手」な超スター選手の事であり、そして「愛し方を知らない」父と「愛され方を知らない」娘の不器用さの事でも有るんでしょうね。
また、「人生の曲がり角」という意味も有るのだそうで、そういう意味を全く含まず安っぽい「感動できる映画ですよ」的な邦題にした方のセンスを疑います。。。


『グラン・トリノ』では、頑固に生きてきた老人が、その意地を貫きながら壮絶な決着を見せるヘビーなドラマを描いてましたが、この『人生の特等席』では同様に男のプライドと人生の決着の付け方を描きつつ、娘との絆を取り戻していく様を感動的かつ爽やかに描いています。

近年のイーストウッド作品はどれも素晴らしい作品ばかりなんだけど、『ミスティック・リバー』『ミリオンダラー・ベイビー』『グラン・トリノ』『ヒア・アフター』と、やや暗くヘビーな作品が多いんですよね。テーマに「死」を扱っていたり。
でも今回、イーストウッドがメガホンを預けたロバート・ローレンツは、古き良きハリウッド映画を連想させる大団円を迎える作品にしていて、鑑賞後、凄くハッピーで暖かい気持ちになれる素敵な映画になってますね。


ガスは頑なに自らの衰えを認めず、誰に対しても無愛想で頑固な態度ばかり。
でも視力や体力の衰えは如何ともし難く、机に足をぶつけたり車をこすったり、、、そして、ついにはスカウトマンにとっては死を意味する「失明」の危機までもが彼を襲う。

そんな彼を一歩離れた場所から見守る同僚を演じたジョン・グッドマンが凄く良い味出してました。
ミッキーがガスのもとを訪ねた事を知った彼が、一人きりでなんとも言えない優しい笑顔を浮かべるんですよねぇ、、。


そして、「父に捨てられた」と思っていたミッキーが隠された真実を知り父との絆を取り戻そうとする姿が感動的で、それ以上に「父親として失格」だと苦悩し続けていたガスが、妻の墓の前で涙ながらにラブソングを歌うシーンは反則でした(笑)。
ただでさえ感動的な話なのに、天下のイーストウッドがそんなシーン演じたら、そんなの観客は泣くに決まってるでしょ!って感じで(笑)。

また、徐々に親子の絆を取り戻して行きながらも、表面的にはラストシーンまで「頑固で融通の利かない偏屈親父」を貫いていたのが凄く良かったです。

個人的にイーストウッド作品で一番好きな『グラン・トリノ』では、古いアメ車の様な時代後れの頑固男が、苦悩も後悔も全て自身の内側に封じ込めたまま、己一人で全てに決着をつけるラストが痺れる程にカッコ良かったんだけど、『人生の特等席』ではその決着の落とし処が爽やかで暖かいハッピーエンドになってる感じですね。
両作は、表裏一体の作品な印象を受けます。

「データ野球」でスカウトを成功させようとする球団首脳部に対して、自らの経験と勘を頼りに立ち向かうガスの姿が、最後に爽快なカタルシスを感じさせてくれますし、ミッキーが恋していく元スター選手(ジャスティン・ティンバーレイク)とのやりとりも良かった。
ガスの否定する「データ野球」を描いたブラピ主演の『マネー・ボール』と比較してみるのも面白いですね。
『マネー・ボール』も良い映画なんだけど、、、。


丁寧なドラマが好きな方には凄くおススメな作品です。


余談。
球団のGMを演じてるのが『ターミネーター2』で「T1000」を演じたロバート・パトリックだと気付いてびっくり。
流石に腕や顔は変形しませんでしたが(笑)、もうすっかり初老って雰囲気になってましたねぇ、、。

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2012/12/23 (Sun) 12:40 | EDIT | REPLY |   

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Category: 映画